UXデザイナーが胡散臭いと思われる理由
UXデザイナーという職業に対して、どこか胡散臭い印象を持つ人もいる。横文字が多く、仕事内容が分かりにくいうえに、専門家らしい言葉で難しいことを語る場面があるからだ。
UXは「User Experience(ユーザー体験)」の略称であり、UXデザイナーは製品やサービスを利用する人の体験を設計する仕事である。Webサイトやスマートフォンアプリ、ECサイト、業務システムなど、活躍する領域は幅広い。
しかし、見た目を整える仕事なら理解できても、「体験をデザインする」と言われると、具体的に何をしているのか分かりにくい。
例えば、ボタンの配置を変えるだけの仕事でも、UXデザイナーは「ユーザーの行動を最適化するための導線設計」と表現することがある。もちろん、専門的な意味がある言葉だが、聞く側によっては大げさに感じられる。
仕事内容の分かりにくさと、専門用語の多さが、胡散臭いという印象につながっているのだ。
UXデザイナーは意識高い系に見えやすい
UXデザイナーが胡散臭いと思われる背景には、意識高い系のイメージもある。
UXデザインの世界では、ユーザー中心設計、デザイン思考、ペルソナ、カスタマージャーニーマップなどの用語が頻繁に登場する。
いずれも適切に使えば役立つ考え方だが、言葉だけが独り歩きすると、途端に中身のない仕事に見えてしまう。
例えば、あるWebサイトの問い合わせ件数が少ないとする。
本来なら、入力フォームが使いにくいのか、必要な情報が見つからないのか、料金が分かりにくいのかを調べる必要がある。
ところが、原因を十分に調べずに「顧客体験の再構築が必要だ」と語るだけなら、具体的な問題解決にはつながらない。
横文字を使うこと自体が悪いわけではない。問題なのは、専門用語を使っているのに、何を改善するのか説明できないことだ。
仕事ができるUXデザイナーほど、難しい概念を誰にでも分かる言葉に置き換えられる。専門知識をひけらかすのではなく、相手が判断しやすい形で伝える能力も重要になる。
UXデザイナーの仕事は本当に必要なのか
UXデザイナーの存在意義を考えるなら、実際のサービスを思い浮かべると分かりやすい。
例えば、ネット通販で商品を購入しようとした際、送料が最後の画面まで分からなかったり、会員登録をしなければ購入できなかったりすると、不便に感じるはずだ。
また、スマートフォンのアプリで目的の機能が見つからず、何度も画面を行き来した経験がある人もいるだろう。
こうした問題は、単に画面を美しくするだけでは解決しない。
ユーザーが何を目的にサービスを利用するのか、どこで迷うのか、どの段階で利用をやめてしまうのかを把握し、改善する必要がある。これがUXデザインの重要な役割だ。
優れたUXデザインは、利用者に特別な感動を与えるとは限らない。むしろ、使っていることを意識しないほど自然に操作できる状態を目指す場合もある。
銀行の振り込み画面で迷わず操作できる。予約サイトで空き時間がすぐに分かる。必要な情報を探すために何度も検索しなくて済む。
こうした小さな改善の積み重ねが、サービスの満足度を左右する。
つまり、UXデザイナーは実体のないイメージだけを売る職業ではない。適切に仕事をすれば、利用者の不便を減らし、企業の成果にも貢献できる。
胡散臭いUXデザイナーにありがちな特徴
一方で、UXデザイナーを名乗っていても、仕事の進め方に疑問を感じるケースはある。
1. ユーザー調査をせずに結論を出す
UXデザインでは、利用者の行動やニーズを理解することが重要になる。
それにもかかわらず、ユーザーへのインタビューや利用状況の分析を行わず、自分の感覚だけで改善案を決めるなら注意が必要だ。
もちろん、予算や納期の都合で十分な調査ができない場合もある。その場合でも、何が分かっていて何が推測なのかを区別する姿勢が求められる。
2. 成果を数字で説明できない
UXデザインの効果は、問い合わせ率、購入率、離脱率、タスク完了率、ユーザー満足度などの指標で検証できる場合がある。
すべての成果を数値化できるわけではないが、改善前後の変化を確認せず、「デザインが良くなったから成功だ」と主張するだけでは説得力に欠ける。
3. 流行の言葉ばかり使う
デザイン思考やAI、行動経済学など、流行している概念を次々と持ち出す一方で、実際の課題を解決できない人にも注意したい。
重要なのは、どんな手法を使ったかではなく、何が問題で、なぜその方法を選び、結果として何が変わったかである。
4. 自分のデザインを絶対視する
ユーザーのために設計したと言いながら、利用者の意見やデータを受け入れず、自分の案に固執するのも問題だ。
UXデザインは、デザイナーの美的センスを披露するためのものではない。自分の仮説が間違っている可能性を認め、必要に応じて修正する姿勢が欠かせない。
UXデザイナーの実力はポートフォリオで分かる
UXデザイナーの能力を見極めたいなら、完成した画面の美しさだけで判断しないほうがよい。
確認したいのは、課題を発見してから改善に至るまでのプロセスだ。
例えば、ポートフォリオに掲載されたプロジェクトについて、次のような点を確認するとよい。
- どのようなユーザーの問題を解決しようとしたのか
- 課題をどのような方法で調査したのか
- なぜそのデザインや機能を採用したのか
- 改善によってどのような変化が生じたのか
- 失敗や想定外の結果から何を学んだのか
見栄えのよい画面が並んでいても、課題や設計意図が説明されていなければ、UXデザインの実力までは判断できない。
反対に、派手な成果をアピールしていなくても、問題の発見から検証までを筋道立てて説明できる人は信頼しやすい。
UXデザイナーの価値は、見た目を作る能力だけではなく、利用者の問題を発見し、解決へ導く能力にある。
UXデザイナーという肩書きだけで判断するのは危険
少し視点を変えると、UXデザイナーが胡散臭く見える理由は、職業そのものよりも、成果が見えにくいことにあるのかもしれない。
例えば、エンジニアがプログラムを動かせば、機能が実装されたことを確認できる。営業担当者なら、契約件数や売上高が成果の一つになる。
一方、UXデザイナーの仕事は、調査や分析、関係者との調整、試作品の検証など、外から見えにくい工程も多い。
そのため、何をしているのか説明されなければ、会議で横文字を並べているだけの人に見えてしまうこともある。
ただし、これはUXデザイナーに限った話ではない。経営コンサルタントやマーケターなど、知識や提案が成果につながるまでの過程を評価しにくい職業にも共通する問題だ。
大切なのは、肩書きや話し方ではなく、実際の行動と成果を見ることである。
UXデザイナーは胡散臭いのか?
UXデザイナーという職業自体が胡散臭いわけではない。使いにくいサービスを改善し、利用者の負担を減らすという明確な役割がある。
ただし、専門用語を並べるだけで具体的な改善策を示せない人や、根拠のない成果を誇張する人がいれば、疑問を持つのは自然なことだ。
UXデザイナーを評価する際は、横文字の多さや洗練されたプレゼンテーションに惑わされず、課題の捉え方、調査の方法、改善の根拠、成果の検証に注目したい。
そして、優れたUXデザインほど、利用者にはその存在が目立たないこともある。
何も迷わず予約できた。説明を読まなくても操作できた。欲しい情報にすぐたどり着けた。
そうした当たり前の便利さを生み出すことこそ、UXデザイナーの腕の見せどころだ。
胡散臭いかどうかを判断する基準は、職業名ではない。難しい言葉を使わなくても仕事の価値を説明できるか。
そして、実際に利用者の問題を解決できているか。
この二つを見れば、肩書きに惑わされず、本当に信頼できるUXデザイナーを見分けやすくなる。
